それに気づいたのは・・・いつからだろうか。




ふと気が付くと、絡まる視線。

最初は・・・単なる偶然だと、気にかけることもなかったのに。







それが偶然ではなく、必然なんだ・・・そう、気づいた時。






それが、全ての始まりだった。



















   
ガル、マル・・・


















「ハルヒーぃ、この前のことだけどさぁ・・・」

営業終了後の第三音楽室に、光の声が大きく響く。



以前なら、ずっとずっと・・・僕と一緒だったのに。
だって、どんな時でも、僕らの拠り所は互いの存在だけだったから。


始まりは、殿との出会い。
でもそれは・・・僕らの世界が広がるきっかけに、過ぎなくて。
少しずつ、少しずつ・・・僕と光の閉ざされた世界が、広がっていく。

それを僕は・・・とてもいいことだと、思ってた。
ううん、今でも、そう思ってる。



でも。




「ちょ、やめてよ・・・光ってば!」



僕の思考を遮るように、ひときわ大きく響いたハルヒの声に。
僕の視線は、無意識のうちに声のほうへと向けられる。

そこには・・・ハルヒの背後から、抱きつくように腕に抱え込んでいる光と。
口調ほど怒っていない・・・寧ろ、呆れさえも感じさせるような、ハルヒが、光と楽しそうにじゃれあっていて。




藤岡ハルヒ。

彼女の存在が・・・僕と光にここまでの影響を及ぼすなんて、思いもしなかった。
最初はただの「面白いおもちゃ」だったのに。


僕と光を完璧に見分ける、唯一の存在。


見分けて欲しくて、でも・・・二人の世界に土足で踏み込まれたくなくて。
いつだって閉ざしたままだった僕らの世界に、ハルヒはあまりにも自然に入り込んできた。



最初は・・・僕も、惹かれた。
僕らの世界にいとも容易く踏み込んできた・・・『藤岡ハルヒ』という存在に。



でも、より強くハルヒに惹かれたのは。
今もハルヒとじゃれあっている・・・光だった。





これは、きっといいことなんだ。

ハルヒに惹かれている光を感じた僕は、最初・・・そう思った。
と同時に、芽生えかけていたハルヒへの感情を、そっと封じて。


光の邪魔にならない様に。
光の世界が広がるように。




心の底から・・・そう願った。














―――――そのはず、だった。

















光は・・・僕よりも正直で、感情表現も豊かで。
そして、自分の気持ちに疎いところがあるから。

そんな光が、誤解されないように。
喩え僅かでも・・・ハルヒに、光の気持ちが通じますように。

殿がハルヒに惹かれているのも、モチロン知ってるけれど。
それでも、僕にとっての最優先事項は・・・光の幸せ以外に考えられないから。




そう・・・僕は、光のシアワセを。
ただ、それだけを祈っている。

他の誰よりも、僕よりも。




光が・・・シアワセでありますように。









そう願えば願うほど。

何故か、軋む胸の痛みに・・・苛まれて。














光のシアワセを願っているのに。
―――光がハルヒに微笑んでると、胸が痛いんだ。


光の気持ちを応援したいのに。
―――そう想う度に、切なくなって。






光は・・・ハルヒが、好き・・・なんだ。
―――そして、僕は光のことを―――



















なんて、神様は残酷なんだろう。
誰よりも大切な光のシアワセを願って封じた、ハルヒへの想い。


それが、引き金となったのか。
それとも・・・元々持ち合わせていた感情に、今まで気づかなかっただけなのか。





僕は・・・光のことが、好き。




それは、兄としてではなく。

光が、ハルヒを想うように。
僕は・・・光を想っている。





















―――そう・・・気づいて、しまったんだ。





















              →










話が進みません。鏡夜出番ゼロだし。
ゆるゆるとお付き合いいただけると嬉しいです。




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