ちらほらと桜もほころびかけた、うららかな春の日差しの中。



気がついたら俺は、篠宮さんの腕の中だった。










・・・・・どうしてこうなってるんだ?

まだどこか寝ぼけた頭をフル回転してみても、全く思い当たらない。


お昼を食べて、最近忙しかったから残りの休み時間は仮眠をとろうと思って。
教室の窓から外を眺めたら、それはもう抜けるような青空が、俺の眼に飛び込んできた。

どうせなら、外のほうが気持ちいいかも。

そう思って、中庭のベンチを陣取ったところまでは、覚えてる。


それから、何がどうなったら・・・俺は今、こうなっているのだろうか?




隣に腰掛けた篠宮さんの腕に包まれて、その胸に身体を預けるような格好で。
篠宮さんの温もりと鼓動が、心地よく俺を包み込んでくれる。

その安堵感に、再び遠のきかけた意識を奮い立たせて、俺はゆっくりと顔をあげた。



「起きたのか」

「・・・篠宮さん・・・」




その瞬間、俺の視界を奪ったのは・・・鮮やかな空の青と、咲き初めの桜。
そして、春の日差しにも負けないくらい暖かな色を含んだ、篠宮の笑顔だった。



「疲れているのだろう・・・もう少し休むといい」



いつもの厳しさは微塵も感じられない、柔らかな口調でそう諭されると、全てを預けてしまいたくなる。


・・・・・でも。



「俺・・・こうやって篠宮さんのこと・・・見ていてもいいですか?」

「構わないが・・・」



何が何だか分からない・・・といった、少し困惑したような、照れたような表情の篠宮さんも、何だか可愛くて。



だって、空の青と、桜の薄紅と・・・篠宮さんの笑顔が。
あまりにも綺麗で・・・しばらくこのままでいたいって、そう思ったから。


写真とか、映像とかではなく・・・俺の記憶に。
この何気ないシアワセを、しっかりと留めておきたいって、そう思ったから。





そして、何よりも。





この位置から大好きな人の顔を見つめられるのって・・・きっと、他でもない恋人だけの特典だろう・・・?

















篠宮さん、甘やかしモード発動中。(笑)



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