遠藤が風邪をひいた。 本人に自覚があるなしは置いといて、元来、丈夫なほうではないようなので、そのこと自体はさほど 厄介だとは思わないのだが。 何よりも厄介なのは、あいつの性格のほうだ。 「・・・そういえば、明日までに会計部に提出の書類がありましたよね」 「王様にサインをもらわなきゃいけない文書をプリントアウトしないと・・・」 「啓太に預けておいたCDに、この前の会議のレジュメが・・・」 「・・・・・いいから大人しく寝ていろ」 全く、どうしてあいつは、あんなに他人のことばかり気にかけているんだ。 ・・・まぁ、その大半が生徒会関係で、普段それに甘える形になってしまっている俺が言うのも、難かもしれないが。 それでも、だ。 自分の体調が悪いときくらい、自分のことだけ考えればいいものを。 そう心の中だけで呟きながら、ようやっと寝かしつけた遠藤の部屋の扉を、あえてノックもせず、そっと開ける。 聞こえてくるのは、規則正しい寝息のみ。 ぐっすりと眠る遠藤のあどけない表情に、俺は先ほどまでの想いが急に消えうせていくのを感じる。 いつだって、他人のことを考えてばかりで。 自分のことになると、あまりにも無頓着で無防備。 俺にはないものばかりを持っているお前に、俺はどうしてこんなにも惹かれてしまったのだろうか。 こいつの性格を、厄介だと思うことはあれど・・・羨ましいと思ったことなどなく。 ましてや、そんなこいつをほうっておけなかった・・・などという、甘い思考を持ち合わせているわけでもない。 それでも。 俺の目の前で眠る遠藤を、この上なく愛しいと想う、この気持ちは否定しがたい真実で。 「一番厄介なのは・・・俺のこの気持ちなのかもしれんな・・・」 こいつの全てを、俺だけのものに。 愛しさの裏に、隠しきれない独占欲。 否、隠すつもりもない、その感情ごと全て。 俺はお前に捧げよう。 ・・・それが俺の、お前に対する思いの全てなのだから。 中嶋氏がいかに和希にメロメロなのかという、ただのノロケ話。 ブラウザを閉じてお戻りください。 |