「・・・・・眠れない・・・・な・・・」



何でだろう。

毎日毎日、学生生活と理事長の仕事の両立で、充分すぎるほど、身体は疲れているはずなのに。

さっきからもう、何度ベッドの上で寝返りを打ったか分からない。




ごろり。



もう一回、寝返りを打って。





「・・・・・やっぱり、逢いたい・・・のかな・・・」







ポツリと、返る声のない呟きが、漆黒に染められた部屋の中に、やけに大きく聞こえて。


その脳裏に浮かぶのは・・・大好きな彼の太陽のような笑顔。
最近仕事が忙しくて、ほとんど触れることが出来ていない・・・彼の温もり。



思い出したら・・・いてもたってもいられなくなって。







俺はそっと、ベッドを抜け出した。



















   
眠レヌ夜ノ過ゴシ方





















時計は既に、丑の刻さえもとうにすぎて。

当たり前だけど、人の気配など全くない・・・静まり返った廊下を、何処か緊張しながら
歩いている自分が、ちょっと可笑しくて。



―――こんなトコ、篠宮さんに見つかったら、絶対朝までお説教だな。



そんなコトを考えながら、できるだけ足音をさせないように。
でも、少しでも早く会いたくて。





相反する想いを抱えながら、辿りついた先は・・・大好きな、彼の部屋の前。





ポケットからそっと取り出した合鍵は、彼からもらった、たくさんの大切なモノの中で、
俺にとって、イチバンの宝物。


だって合鍵は、いつでも部屋に来ていいっていう証だと思うから。


だからと言って、こんな時間に行くのは、我ながらどうかとも思うけど。





「・・・逢いたくなったんだから、仕方ないよな」





思わず零れた言い訳の言葉は、廊下を包み込む静寂の闇の中へと、じんわりと溶けていく。
ゆっくりと鍵を回して・・・ドアの隙間から、そっと身体を忍び込ませた。









静まり返った室内に感じる・・・彼の、気配。

自分の部屋じゃないのに、もしかしたら、自分の部屋以上に長い時間を過ごしているかも
しれない室内は、決して片付いているわけではない。
それでも、何処に何があるのか、暗い室内でも把握できるほど、この部屋に慣れ親しんでいる
自分に気がついて、何故か笑みがこぼれる。



ゆっくりと、起こさないように・・・ベッドで眠る彼に近づいて。







起こすつもりなんて、ない。
ただ、ちょっと顔が見たくなっただけ。
だから、寝顔だけで充分。




そんなコトを思いながら、彼の眠るベッドへと近づき、そっと、眠る横顔を覗き込む。




男らしい、精悍な顔立ち。
中でも、彼の性格をそのまま表したような・・・強い意志に満ちた瞳は、固く閉ざされていて。



・・・・・寝顔だけで・・・充分。
そう思っていたハズなのに。




ゆっくりと繰り返される寝息に、微かに震えるような唇に、俺の視線は、何故か囚われて。
吸い込まれるように、ただ・・・そっと唇を重ねた。











「・・・・俺は、すごく欲張りなのかもしれませんね・・・」






目の前で眠る大好きな彼を・・・手に入れても、手に入れても・・・まだ、求めてる。




彼はいつだって、俺だけを見てくれているのに。
彼はいつだって、俺のほしい言葉をくれるのに。




それでもまだ、俺はそれだけでは飽き足らず・・・彼という存在を、ただひたすらに求めてしまう。










俺はきっと、怖いんだ。
彼が・・・いつか、こんな俺に愛想を尽かしてしまうんじゃないか・・・と。



求めれば、求めるほど。
欲すれば、欲するほど。



いつか・・・この手からすり抜けてしまうような・・・そんな気がして。



それは、出口のない迷路のようなもの。



この恐怖はきっと、彼の傍にいる限り・・・消えやしない。
彼から離れることなど、到底出来やしないのに。











「・・・・こんなんじゃ、いつか本当に・・・嫌われる・・・かもな」
「んなワケねぇよ」





自嘲めいた俺の言葉を、遮るように響いた声に、俺は思わず目を瞠った。






「俺がお前を手放すなんてコトは、絶対ありえねぇ・・・俺が保障してやるよ」





いつの間に目を覚ましていたのだろう。
でも、その時の俺は・・・彼を起こしてしまった罪悪感よりも、彼からもらったその言葉が
ただ、嬉しくて。



「・・・・・王様」
「お前こそ、今更俺と離れようったって、そうはいかないから、覚悟しとけよ?」




その大きな手で、俺の頭をがしがしとかき混ぜるのは、王様なりの愛情表現で。
王様よりもいくつも年上の俺が、こんなコトをされて嬉しいなんて・・・きっと、どうかしてる。


そのまま逞しい腕でぎゅっと抱き寄せられると・・・頬に感じる王様の温もりと、確かな鼓動。
恐る恐る、その背に手を回して・・・俺は王様へと、全てを預けるように寄り添った。





「お前が喩え誰であろうと・・・俺はお前を手放す気なんて、全くないからな」





―――それって・・・どういう・・・・





耳元で甘く響く、王様の言葉の意味が気になりながらも、俺はゆっくりと意識を手放した。
世界で一番、安心できる・・・この場所で。

















うわ、なんじゃこりゃ。(汗)
祝☆初王和。でも、ダメダメっぽいです。和希ちょっと弱スギです。二人の絡みなさスギです。
ダメ出ししたら、キリがなさスギです。
ってか、自分が眠れないからって書いてる時点でダメダメです。(笑)


※2/6:少しだけ加筆修正の上、シリーズ化しました。
 よろしければおつきあいくださいませ。






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