退屈で、けだるい・・・昼下がりの授業。

しかも、どちらかといえば俺の苦手な古典の授業とくれば・・・必然的に眠気にも襲われて。
窓辺から差し込む心地よい日差しに、否応なしに意識を奪われかけた、その時。









内ポケットに入れていた携帯が、小刻みに震えた。





















   14.授業中























『今すぐ来い』



ディスプレイに表示された、文字の羅列。
たった5文字。当り前のような命令口調。
しかも来いとかいってるくせに、場所指定もなし。



名前を見る必要もない。
こんなメールを送ってくる相手なんて、たった一人だ。




『無理ですよ、今授業中じゃないですか』




返事をするのもバカらしいような内容を、とりあえず送信してみる。
・・・なんとなく、返事は見なくても分かる気がするけど。






程なく、再び小刻みに震えた携帯を確認すると、俺は大きくため息をついた。










『いいから来い』










今度は6文字。でもやっぱり、命令口調のままで。
あの人らしいといえば、あの人らしい。







やれやれ・・・と、心の中だけでため息をついて。
どうして俺はあの人にこんなに弱いのかな・・・なんて、ぼやいてみたところで、その理由は
誰よりも俺が一番分かってるんだけど。






「先生、気分が悪いので保健室へ行ってもいいですか?」






そんなお決まりの台詞でしか、教室を出る術がないのも分かっているはずなのに。





・・・・・中嶋さん、恨みますよ。





背けないと知っていて来いと言う、意地悪な恋人に・・・俺は心の中だけで、そっと悪態をついた。
























「ったくもう・・・いつものこととは言え、本当にワガママと言うかなんと言うか・・・」


教室を出てくる際に、心配そうに見つめていた啓太のコトを考えると、胸が痛む。
啓太に心配なんてかけたくないのに、それでも行こうとしている自分にも、無理だと知っていて
呼び出す中嶋さんにも、何だか無性に腹が立って。



絶対顔を見たら、ヒトコト文句を言ってやるんだ・・・!!




まるで呪文のように心の中で何度も繰り返しながら、静まり返った廊下を、いつもより大股で歩く。
目的の生徒会室の前までたどり着くと、ノックもせずに扉を開けた。





「遅かったな」




何処か憮然とした顔で言い放つ中嶋さんには、当たり前だけど悪びれた様子なんてなくて。
その長い指先で煙を燻らせている煙草以外に、灰皿には既に数本の吸殻が散らばっていた。





「・・・吸いすぎですよ」
「お前が遅いのが悪い」
「遅いって・・・そんなに経ってないでしょう?」
「俺にこれだけ煙草を吸わせるには、充分な時間だな」






唇の端だけで笑いながら、煙草を灰皿に押し付ける。
相変わらずなその物言いに、腹を立ててもいいはずなのに・・・それよりも、そんな仕草さえも
様になっていて格好いいと思ってしまう俺は・・・もうダメかもしれない。




さっきまであんなに腹立ってたのに・・・。
ヒトコト文句を言うんじゃなかったのか・・・俺。




そう心の中で叱咤しても・・・うまく言葉が出てこない。
さっきまでの怒りはまるで、霧が晴れていくように・・・跡形もなくどこかに消えてしまっていて。






「・・・・・それよりも、何か用事でしたか?」
「用事?」
「だって、すぐに来いってコトは、何か用事があったんじゃないですか?」



何を言ったらいいのか分からず、思わず口にした質問に、中嶋さんは訝しげな視線を向ける。
いくら中嶋さんでも、何の用事もなく急に呼び出したりは・・・・しない、よな・・・?




「・・・・・あぁ、そうだな・・・」





ビミョウに気になる間の後、中嶋さんがゆっくりと俺のほうへと近寄ってきて。










「お前の顔が見たかった・・・ただ、それだけだ・・・・・」








耳元を擽るように囁かれた言葉に、俺の中の何かが音を立てて崩れていくのを感じる。








「・・・な、かじま・・・・さん・・・・・」


そっと、その広い背中に手を回して。
どちらからともなく交わされた口づけで、互いの熱を確かめ合う。
先ほどまでの怒りも、戸惑いも・・・もう遠くの出来事で。




感じるのはただ、中嶋さんの温もりと・・・鼓動だけ。







―――――中嶋さんが、好き。
―――――中嶋さん以外、何もいらない。







そんな想いだけが、俺を支配していく。
















遠くで、授業終了を知らせるチャイムが聞こえたような・・・気がした。
















なんていうか・・・その、ゴメンなさい。
その手のシーンを書くのは本当に苦手なのです。っていうか、書けないんです。(泣)
もちろん、この後和希は、帝王においしく頂かれます。
据膳食わぬは男の恥です。(それかなり違うから)
物足りない方ゴメンなさい。皆さんの脳内妄想で補完してください。(逃)






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