「・・・それは何だ?遠藤」


生徒会室の窓辺に椅子を持ち出して、外を見つめたままぼんやりとしていた遠藤の口には
得体の知れないドーナツ状の物体が銜えられていた。













×
×× ストロベリーキス ×××














「あぁ、これですか」

俺の声に振り返った遠藤の手には、どこかで見たことのある形状の菓子の包みが握られていた。
安価で食べきりサイズという・・・コンビニなどでよく売られているアレだ。



「新製品らしくて。啓太が持ってきてくれたんですよ」



にっこりと笑みを浮かべた遠藤が手の中のものを、オレの目の前で小さく振る。
『いちごリング』と書かれたそれは、ピンク色の小さなドーナツ型をしているようだった。



「オレの目の前でそれを振るな」
「・・・何でです?」
「その甘ったるい匂いだけで、頭が痛くなる」




正直、甘いものは好きじゃない。
いちご味のビスケットなど、考えるだけで胸焼けしそうだ。


不機嫌な表情を隠さずに、目の前の遠藤を見据える・・・が、遠藤は手の中のそれを一つつまむと
自分の口へとほおりこんだ。


「少し甘いけど、中々いけると思うけどな・・・中嶋さんもどうです?食べてみたら意外と・・・」
「いらん」
「じゃあ、俺が口移しで食べさせてあげますから」
「・・・結構だ」




あんな甘ったるそうなものを、口に突っ込まれることなど・・・想像もしたくない。
さらっと遠藤が言った台詞も気にならないことはないが、それでもあんなものを口にしたいとは、
到底思えない。




「・・・・・そっか、中嶋さんがそういうなら仕方ないです」




言葉と同時に、遠藤がゆっくりと腰を上げる。


「遠藤、何処へ行く」


そのまま戸口へと向かって歩いていく遠藤の手を取り、呼び止めた。



「何処って・・・中嶋さん、匂いもイヤなんでしょう?だから啓太のトコに行くんです」





その言葉に俺は、思わず眉根を顰めた。


啓太に会いに行くのは、別に構わない。
だが、啓太のいる場所が問題なのだ。
この時間ならおそらく・・・啓太は会計室にいるだろう。
啓太が会計の犬と付き合っている以上、それは間違いない。


あの女王様の犬のいるところに、遠藤が行く。



そこが問題なのだ。



確かにアイツと啓太の味覚なら・・・これを喜んで口にするであろう事は容易く想像できる。
想像できるのだが・・・。






「・・・いいからここにいろ」
「でも、イヤなんでしょう?」
「俺に食えといわないのなら、後は好きにすればいい」


別に部屋中に匂いが充満するほど匂うわけでもない。
少し離れてしまえば、その甘い匂いはほとんど感じられない。




―――――尤も、一緒の部屋に二人きりで・・・離れていたことはあまりないがな。





ため息をつきながら、俺もつくづくこいつに毒されてるな・・・と、心の中だけでぼやく。




それでも、こいつが会計の犬の横で笑っていることに比べたら、ここで甘ったるい匂いを
ガマンしている方がマシだと思うのも・・・また、まごうことなき事実で。






「・・・・中嶋さん、大好きっ・・・・・」





己の考えに没頭していた俺の首筋に、腕を絡めるように抱きついてきた遠藤の甘い声が、俺の耳に
届いた瞬間・・・その柔らかな唇がゆっくりと重ねられて。









―――――それは眩暈のするほど・・・甘くて蕩けそうな、ストロベリーキス。













2/1の日記
の妄想を、駄文化してみました。
え?誰も頼んでないって?まぁまぁ、腐女子の妄想は誰も止められないものですよ。(笑)

あのお菓子からここまで妄想を広げる己のバカさが、ある意味愛しいです。
この力をもっと他の方向に活かせれば・・・!!






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