「わぁ・・・中嶋さん、見てください・・・一面銀世界ですよっ!」


そんな遠藤の声にたたき起こされた俺は、渋々、ベッドから降りた。

















    
SNOW −SIDE:HIDEAKI−NAKAJIMA−

















夕べから降り始めた雪は、この地方には珍しい大雪となったようで。
寮の部屋から見える、いつもと変わらないはずの景色も、純白のベールに覆われた別世界のようだった。



本来なら、互いを求め合った次の日・・・しかも日曜なら、お昼過ぎまでベッドから出ようとしない
遠藤が、いそいそと楽しそうに私服に着替える様を、俺は紫煙を燻らせながら、何気なく見やる。


「中嶋さん、いつまでそんな格好してるんですか?」


急に視線を合わせて、遠藤が俺に言い寄る。

俺はまだ、下こそ穿いてはいたが、上はカッターシャツを一枚羽織っただけの状態で。
そんな俺の手から、遠藤は煙草を取り上げると、そのまま灰皿へと押し付けた。





「早く着替えちゃってください」

「何故俺が着替えなければいけない?」

「こんな雪、めったに見られませんよ」

「見るだけなら、ここからでも十分だと思うが?」

「満喫するんです」





にっこりと、屈託のない笑顔で微笑みかけられて。


・・・・・いや、あの笑顔のときの遠藤は、要注意だ。
屈託なく笑っているように見せかけて、裏では何かを企んでいる。
その微妙な匂いを嗅ぎ取った俺は、何事もなかったように机の上の煙草に手を伸ばすと、
そのまま火をつけた。






「・・・・・ふ〜ん、そっか。そうなんだ・・・・・」





あからさまな俺の態度に、遠藤が目を細める。




「いいですよ。それじゃあ、啓太と七条さんを誘いますから」




敢えて七条の名前のところだけ強調して、遠藤がくるりと背を向ける。
そのまま部屋の扉へと手をかけた遠藤の躯を、後ろから力任せに引き寄せてやった。





「・・・ちょ、中嶋さんっ・・・?!」

「俺を挑発しているのか・・・?なんなら、動けないようにしてやってもいいんだぞ?」



言葉と同時に、耳朶を軽く食んでやる。
そのまま、眼前に曝け出された白い項へと、そろそろと舌を這わせてやると、俺の腕の中で
遠藤の躯がピクンと大きく跳ねた。




「あっ・・・な、かじまさん・・・やめ・・・」




微かに、漏れるように紡がれた言葉は、その意味とは裏腹に、求めているかのような熱を孕んでいて。
そんな遠藤の躯を、今度は扉のほうへと少し突き放してやると、急に開放された遠藤が、怪訝そうに
俺のほうを振り返った。




「中嶋・・・さん・・・?」

「着替えてくる。少し待っていろ」

「えっ・・・?」

「雪・・・満喫するんじゃないのか?」






俺の言葉に、一瞬の後、遠藤の顔が少しはにかんだ様に微笑んで。







「はい・・・満喫、しちゃいましょう」









そんな遠藤の仕草に、俺はらしくない感情を抱きながら、自然と笑みが零れているのを感じていた。











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ちょっと短いですけどキリがいいのでいったん切ります。
次は和希視点で。







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